4年前のことだ。
この街でいちばんステキだった飲食店が
コロナ禍の度重なる営業制限によって、
店を完全に閉めてしまった。
その場所を通るたびに、
店長と和やかに楽しく話した記憶が蘇り、
もっと話を聞きたかった。
もっと笑顔を見たかった。
もっと定番メニューを食べたかった。
そう、悔やんだ。
懐かしさが次第に寂しさへと変わった時、
私は初めて、
その店が、その店長が、その時間が、
大好きだったことに気づいた。
「あれは夢だったのだ」
私は大事に、大事に、
まるでプレゼントの素敵な包装を
優しく保管するように、
記憶の宝物として包んでいた。
そう思って諦めていたのにー
そう、
人生には「まさか」という坂があることを
すっかり忘れていたのだー
なんと、
4年経って再会するシナリオになっていたとは。
なんということだろう。
私は、思わず、駆け寄り、手を握った。
なんという奇跡だろう。
この幸せを、この感動を、
なんて語ればいいのかわからなかった。
どうして、人間は、言葉が必要なんだろう。
適した言葉など、見当たらない。
どこにもないのに。
考えるまもなく、思考は停止した。
「会いたかった」
「元気そうでよかった」
誰かと再会して、
こんなにも嬉しくなったのは、
いつぶりだろうか。
私の中の言葉たちは
どこか異星へと旅に出たのかもしれない。
ありきたりな言葉しか出てこなかった。
店長はあの時と同じように
照れくさそうに笑って、
「実はあの時、大変だったんだ」
とニコニコしていう。
そんなニコニコできることじゃなかっただろうに。
胸がちくりと痛んだけれど、
再会に弾む心へとまた戻っていった。
「また一緒にご飯を食べよう」
「あの場所にいるから、いつでも来て」
と店長が言ってくれたその言葉が、
嬉しくて、嬉しくて、嬉しかった。
その後、またねと手を振り、
私は軽く用事を済ませてから、
その場所を見にいった。
忘れないうちに。
いつでもまた顔が見れるように。
すると、通りの向こうから店長が歩いてきたのだ。
本日、2回目の、
奇跡の再会。
エェ〜ッ!?
今までこの4年、
一度も会わなかった人と、
1日に2回も出会うなんて!?
店長は、変わらず笑っていた。
やはり偶然などないと知るし、
宇宙の采配としか呼べないこの
ステキなサプライズを、
人は「運命」だというのだなと思った。
生きていればいいことがある。
お互いに。
私は、久しぶりに、
そのことを実感したのだった。
その夜、
店長とどんな話をしようか、
何を食べようか、
ワクワクしすぎて、
気づいたら朝になっていた。
やはり、冷めることのないこの情熱に
「生きていてよかった」
「生きていればイイことがある」
「私は、今までどれほどそう思ったのだろう」
眩しい太陽に目を細めたら、
ふふッと微笑んでいるように見えた。