雨だ。
突然暗くなった重たい空が、
これからもっと降ることを
指し示していた。
慌ててすぐそばにあった
ローソンに雨宿り。
ローソンの
スカイブルーの屋根に守られながら、
同じように屋根ある場所へ
駆け込んでいく姿たちを見た。
通り雨のようだし、
すぐ止むに違いない。
衣服についた雫を払いながら、
もう一度、
重い雨雲を見上げてみると、
大粒の雨が降り注いできた。
やっぱり。
そう思った次の瞬間、
灰色に光るゴツゴツとした石のようなもの
が降ってきた。
手のひらサイズの大きさだった。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/asteroids-g8ffd2f195_1920-300x169.jpg)
ゴツン。
ゴツン。
鈍く重い音が聞こえ、
「当たらなくてよかった」と思った。
周りを見渡してみると、
その石に当たっている人は
一人もいないようだった。
よかった。安心した。
不意に、雨が終わりを告げた。
みるみるうちに空の色が戻っていく。
濡れた地面に、太陽の光が反射し始めた。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/village-gc41f7ea99_1920-300x169.jpg)
天から降ってきた石たちが
太陽の下に晒され、
怪しく光っている。
黒曜石にも見える。
小学生の頃、
新築のマンションの下で見た、あの石。
不思議なことに、
地面に散らばることなく、
小山のように積まれていた。
自分の体半分ほどの石の小山が、
あちらこちらにあった。
まさか、隕石・・・?
わたしは近づいて、それを真近に見た。
手にとってビックリした。
石だと思っていたソレは、
石ではなかったのだ。
よく見ると、
それぞれが違う姿形をしていて、
わたしが手にとったものは、
文字らしきものが描かれている
土偶のような彫刻だった。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/statue-g0f1ffe4a7_1920-300x200.jpg)
しかも、ものすごく、軽い。
木彫りなのだろうか。
よく見たら、オークカラーだった。
確かに降ってきた時は、
ダークグレーだったのに。
二個ほど手にとったが、
それぞれが違う形をした「何か」だった。
重さもエネルギーも違うように思えた。
とてもではないけど、
言語では形容しにくい「何か」だ。
貴重なものなはず。
持って帰ろうと思ったが、
なんとなく、
持って帰ってはいけない気がした。
「これはっっ!!
誰にもっっ渡さないっっ!」
5メートルほど離れた場所にいる
小太りの男が、
小山にかぶさってうめき声で叫んでいた。
異様な光景だった。
貴重なものだから
高く売ろうと思ったのかもしれない。
ほとんどの人が、
自分のカバンや服のポケットに
石を詰めていた。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/statue-g7298bea68_1920-300x300.jpg)
わたしは手にとっていた
「何か」を小山に静かに置いた。
日頃から
「なんとなく」に従うようにしている。
直感はいつも正しいから。
熱気を感じて振り返ると、
スポットライトのような強烈な光が現れた。
女性の宇宙人が立っていた。
腰まである長いブロンドに、
ウェーブがかった髪、紫の瞳。
声には、
透き通った純粋な美しさがあった。
気づけば、
われわれ地球人は
知人も初対面も関係なしに互いの腕をとり、
直線上に陣を組んでいた。
なんのためにかはわからない。
わたしは正面よりやや右側で、
宇宙人を見ていた。
前代未聞。空前絶後。
頭にそんな言葉がよぎった。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/woman-ga080b46dd_1280-300x199.jpg)
女性の宇宙人がこう言った。
「あなたたちに贈り物があります」
決して大きな声ではないのに、
全員に聞こえたようだった。
胸にスッと入ってくるような、
真っ直ぐとした、声。
プールで使う、
ビート板のようなものに乗った宇宙人が、
無作為に贈り物を渡していく。
わたしは3番目にもらった。
例によってビート板男
(インド人のような顔立ちに、
金髪の花輪くんヘアーだった)が、
迷うことなくわたしめがけて来て、
贈り物を渡すと一瞬で円盤へ戻っていった。
どういう基準で贈り物が選ばれ、
贈り物を渡す人が選ばれているのだろうか。
もらえない人もいるのだろうか。
もらったとして、
何に使うためなのだろうか。
非日常的すぎることが続き、
わたしはもっと長く見ていたかった。
好奇心がそそられるからだ。
しかし、実際には、
唖然としながら、
受けるがままに贈り物を受け取っていた。
宇宙人からの贈り物。
自分の手のひらに視線を落とすと、
それは、
缶の入れ物だった。
![](https://chalarie.com/wp-content/uploads/2022/01/ufo-gc95e42654_1920-300x169.jpg)
円盤型のフタ。
水色のパステルカラー。
フタはパカッと簡単に開けることができて、
底はシルバーだった。
まるで手のひらサイズのUFOだ。
?何これ?
?いったい、何に使うの?
そこで夢から覚めた。
心臓がうるさく鳴っていた。
どうやらわたしは息を呑んでいたらしい。
慌てて息を深く吸い込んだ。