太陽がジリジリと肌を焦がしていた。
―のんびりと歩いていられない。
女は、何かに駆られるような足取りで入道雲を追いかけていた。
昼間の都会。
交差点は行き交う人に溢れている。
突然、女は1つの矛盾に気づいた。
雑踏の中を歩きながら溶け込んでいる自分を見つめ、
果たして「個」である理由がどこにあるのだろうか?
と疑問に思った。
それには2つの解釈がある。
いずれにせよ、ネガティブな解釈ではない。
1つは、
景色に溶け込んでいるなら、それは「個」と言えないということ。
―「個」が存在しない?
―「個」でないものがどこにあるのだろうか?
とまたしても疑問に思えば、1つもないと思う。
故にこの解釈は「全ては1つ」を現している。
同時に、
「個」が存在する理由が確かに有ることにも気づく。
もう一つの解釈である。
「個」が有るからこそ、その景色が成り立っているということだ。
有るけど無い。
無いけど有る。
「どちらとも言えるし、どちらとも言えない」
それが「真理」と呼ぶべきものであり、「真実」であろう。
皆を束縛せず、強要させないもの。
そうでないと、「真理」や「真実」とは言えない。
人は自分が見たいように見たものを解釈する。
時にそのことが首を絞め、足を取られてしまう原因となってしまう。
「どちらとも言えるし、どちらとも言えない」
両サイドに立てる考えを持とう。
当たり前のように思ってしまう風景でも、
ヤシの木のように経っていれば、
こうした真実を発見することができる。
女は足取りを弱め、サングラスの間から夏の太陽をそっと見た。
short story
「矛盾の中で咲く花」
by Yumi Chalarie